耐震(補強)設計

はじめに

毎日の生活を育む住宅は大きな地震が来ても命を守ることができる安全な住宅である必要があります。北海道は今までは、比較的地震の少ない地域と考えられており、建築基準法で過去の100年間の地震の頻度を根拠に昭和55年に決められた地域別地震係数は東京、大阪が1.0であるのに対して、札幌では0.9となっています。そのため、構造計算をして設計する場合、東京や大阪などでの住宅で必要となる耐力を10割とすると札幌は9割で良いということになっているのが現状です。

2016年4月14日~16日にかけて3回連続で起こった熊本地震は、大きな被害を地域にもたらしましたが、その後の専門的な調査で、いくつか新しく分かってきたことが4つあります。

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従来通りの地域別地震係数に対する考え方を見直す必要があります。

一つ目は、熊本や大分県は地域別地震係数0.8と0.9の地域であったことから、確率的に地震の発生の少ない地域であっても、大きな地震はくるのだから、どの地域にあっても備えは同様にしておくべきではないかとの考え、従来どおりの地域別地震係数の考え方を見直す必要があるのではないかと私たち技術者が考え始めているということです。

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在来工法住宅では構造計画上の基本が曖昧でした。

二つ目は、構造等級2の住宅も大きな被害が受けた住宅がありました。上下階で柱や壁の位置が半分以上そろっていないことが原因でした。2×4住宅では耐力壁線を上下階で合わせるということをするのですが、在来工法住宅では今までその構造計画上の基本があいまいでした。

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重なる大きな地震には現在の建築基準法の耐震レベルでは耐えられません。

三つ目は、大きな地震が繰り返し来たことで、最初の地震で住宅は倒壊しなかったけれど、一度避難所に避難した後、翌日や翌々日に自宅に戻った時に、大きな地震がきて、住宅が倒壊してしまって、被災してしまった方もいました。現在の建築基準法の耐震レベルは1度の大きな地震に倒壊しないことを想定していますが、2度の大きな地震には最初の地震のダメージが残っていますので、耐えられません。

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表層地盤の確認と設計上での考察が重要になります。

四つ目は、同じ街区の中でも数百メートル離れただけで、家が倒壊した所とそうでない所と二つに状況がわかれました。その原因の調査が詳細に行われ、表層地盤の違いによる被害状況の違いということがわかりました。表層地盤とは地表面から下方に概ね100m程度の深さまでの地盤のことを言います。防災科学技術研究所が表層地盤マップを作製していますが、研究所によれば扇状地や後背低地等、地盤の悪いところは、想定されている震度よりも実際の計測震度は約0.5上がることになり、震度6強と予想されている地域は、震度7に相当する揺れとなると説明されています。そのためこれからは、表層地盤の確認と設計するうえでの考察が重要となります。

札幌の町は、扇状地であることその先端は後背低地となっていること、縄文時代には縄文海進で石狩湾の入り江が深く入ってきて海となったり、海だったことをうかがわせるように砂が深く堆積していたり、その時に海に埋まった草木が泥炭になったり、と液状化の恐れのあるところ、軟弱地盤のところがたくさんの面積をしめていますので、適切な地盤対策をする必要があります。

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